設立趣旨書

 すでに230万人に及ぶ在留外国人が日本に暮らし、日本社会のさまざまな分野で欠かせない重要な役割を担い始めています。滋賀県においても歴史的背景を有する在日韓国・朝鮮人や中国帰国者とその家族、国際結婚を機に移住してきた人々、また1990年代以降に増えてきた南米出身者、県内の教育機関で学ぶ留学生、農業や製造業の現場で実質的な労働の担い手となっている実習生や研修生など、さまざまな渡日経緯、在留資格、生活実態を抱えた外国人住民が暮らしています。日本国籍を取得した人々も含め、今後ますます滋賀県にとって足元の国際化は重要な課題になってくると思われます。

愛荘町で1998年に開設された「Colégio Sant'Ana(サンタナ学園)」は、労働現場に派遣されて働くブラジル人の親たちに成り代わって、子どもたちを保育する施設から始まりました。その子どもたちの成長に伴い、学校教育の必要性が高まり、のちにブラジル政府から初等教育認可を受ける教育機関として発展してきました。

保育においては、不安的な保護者たちの就労形態に合わせ、子どもたちを早朝から夕方まで預かっています。生活習慣や言葉の問題などにより、地域の保育所が担いきれない保育サービスを提供し、まさにブラジル人コミュニティの欠かせない子育て拠点となっています。

教育においては、ブラジルの教育課程を軸にして、子どもたちに基礎学力を培うとともに、日伯の懸け橋になる子どもたちの社会進出を支援する学校としてこれまで歩んできました。現在、小学校課程から高校課程の子どもたちが「コレジオ・サンタナ」で学んでいます。

一方、単なる教育、保育の提供にとどまらず、主にブラジル出身者の相互扶助や生活相談の窓口としても役割を担っています。地域で孤立しがちな多くの外国人家族のサポートにあたり、住宅、医療、労働、在留資格などここから専門機関につながり、課題解決につながった事例が少なくありません。

「Colégio Sant'Ana(サンタナ学園)」は、滋賀県内の主にブラジル人コミュニティを支える公益的な活動や、多文化共生のための地域社会づくりを担っていると言えます。

ただ、そうした活動や役割が、これまで正当な評価を受けてきたかと言えば必ずしもそうは言えません。地域社会において一定の認知を受けつつも、「私設」形態であったため、担っている公益活動や公的役割に比して、その評価は限定的であらざるを得ませんでした。

このようなことから、地域団体や地元自治体との連携、企業との協働、大学や専門機関とも有機的につながり、誰もが地域で大切にされる社会をめざしていきます。同時に、新しい公共の担い手になるべく取り組みを進め、生活者として暮らす外国人住民のコミュニティ支援を充実していきたいと考えています。

これらの経過を踏まえながら、活動や役割をさらに発展させ、子どもたちの拠点をより安全でより快適なものとするため、または地域の多文化共生ネットワークをさらに広げる拠点として、「特定非営利活動法人」として設立するものです。

定款